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アップデートで50%のユーザー離れを防ぐためにアンケートを取ってCS向上を考える

August 25, 2017

サービスやメディアを運営していく中で、ユーザーの声を反映していますか?

サービス、メディアを長く運営していくといずれはWebサイトのフロント側のリニューアルや仕様変更に伴いシステム側の大掛かりな改修などといった更新作業を行うことになります。

その際にユーザーのことを考えずに改修、更新を行ってしまい半数のユーザーを失ってしまった実例を交えてCS(Customer Satisfaction、顧客満足度)向上のためのアンケート調査実施の重要性について説明します。

問い合わせとはまた違い、ユーザーから直接声を聞くことのできる「アンケート」の重要性について触れていきます。

1. ユーザーの声を聞かずに失敗した実例

1-1. 失敗の原因は運営側とユーザー側のギャップにある

運営側の人数にもよりますが、アプリで例えると運営とユーザーにはこのような違いがあります。

  • 運営 :
    開発、デバッグ程度しか触れない。
    少数での運営ほど日常的に使用しないことが多い。
  • ユーザー :
    ニーズに合ったものであればヘビーに使用する。
    運営側が想定していない使用方法(ユーザー的に便利な使い方)を発見する。
    結果として運営、開発サイドが想定し得なかったイレギュラーケースやバグも発見する。

提供する立場になると、ユーザーがどんな使い方をしているのかを把握することは難しくなります。

アプリの例えだと、i文庫Sのような青空文庫アプリに「iTunes経由でzipやpdfファイルの受け渡し機能」、「DropboxやBoxといったクラウドストレージサービスとの連携機能」が実装されているのは、ユーザーは提供されている青空文庫よりも自ら用意した書籍や書類を、このアプリをReaderとして使って読みたい需要が高かったことの表れでしょう。

また例えばTwitterやFacebookの場合、本来の姿であるユーザーがTweetしたり、リツイートやリプを送って交流したりする用途の他にも、あらゆる企業が様々な情報を取得してトレンド調査に用いたり、企業の人事担当が新入社員の素行チェックに使ったりします。

用意した使い方以上のものをユーザーが発見してくれることは、提供側からすると嬉しいことです。

そのような側面があるので、「このような使い方をするために作ったのだから、こういう使い方をしているだろう」といった固定観念を持っていると、ユーザーにウケている機能や使い方を知らずに削除してしまい、大量のユーザー離れを引き起こしてしまうことになります。

ユーザー目線になっていないがために失敗した2つの事例を見てみましょう。

1-2. 実例その1 : Icons8

リンクを貼れば無料で使えるアイコンサイト、Icons8です。
Icons8

このIcons8では、UI変更、コメント欄の削除を行いましたが、それがユーザーの求めていたものとギャップを生んでしまいました。

UI変更ではリクエストアイコン機能のカウンターがわかりにくく、カウントされている数字が現在の順位なのか投票数なのかわからなくなったこと。

そしてコメント欄が無くなったためユーザー同士のコミュニケーションがとれなくなり、結果ユーザー間に「サービスが正常に機能しているのか」という不安を与えてしまいました。

そのために大規模なユーザー離れを引き起こしてしまいましたが、その後の入念なリサーチの結果、上記のユーザー離れの原因を突き止め、ユーザーが求めていることに気づくことができて今ではユーザー数は回復しています。

上のリンクはIcons8自身がサイトで事例を解説しているページですが、その中では他の有名なサービスの類似事例が紹介されています。

英語の記事ですがソーシャルブックマークサービス(現在はニュースサイト)のDiggや英国の小売大手のMarks & Spencer、アメリカの老舗ニュース専門チャンネル CNN などの事例が紹介されていて読み応えがあるのでぜひご覧ください。

1-3. 実例その2 : Final Cut Pro X – Apple

Final Cut Pro X review : Apple will happily piss off 5,000 professionals to please 5,000,000 amateurs.
———-
Final Cut Pro X レビュー : アップルは5,000,000人のアマチュアを喜ばせるために5,000人の専門家を喜んで怒らせるだろう。

2011年にアップデートされたFinal Cut Pro XのレビューをユーザーがTweetしたものです。

また The New York Times でコラムを書いている David Pogue氏 も下記のように表しています。

“This is Apple’s worst release in history,” seethed one in an e-mail message. “Apple has absolutely no clue what professionals need. There are so many missing high-end features that we need, it should be called iMovie Pro.”
———-
「これは歴史上、Appleの最悪のリリースである」と、電子メールで1つを示した。「Appleには、プロフェッショナルが必要とするものは絶対にありません。私たちが必要とする欠けているハイエンド機能がたくさんあるので、iMovie Proと呼ばれるべきです。

Final Cut Pro X は、iMovie で獲得したライトなユーザー層を取りこむために、Final Cut Pro X を iMovie の上位互換のような設計へと大幅に変更しました。

さらにそのタイミングでかねてより要望の高かった64bitへ対応させたのですが、もともと愛用していた専門家達を切り捨てるかのような下記も行いました。

  • 編集ソフトの標準機能というべきマルチカメラに対応していなかった
  • 過去のFinal Cutシリーズで作成したファイルとの互換性がなかった
  • Final Cutシリーズのスイーツで同梱していた優秀なアプリ達を排除した

特に過去のFinal Cutシリーズで作成したファイルを開けなくなったことは致命的のようでした。

当時はニュースサイトでも取り上げられるほど話題になっていましたが、既存ユーザー的にはAppleのアップデートに対しての考え方への諦めもあったようにみえました。

その後、直感的な操作性になったことと、スイートのパッケージ版ではなくMacのApp Storeで販売したことも功を奏したのか、新規ユーザー獲得も順調にいきマルチカメラへの対応など改善を重ねて今ではまた人気の動画編集アプリとしての地位を獲得しています。

余談ですが最近だとシン・ゴジラやなつやすみの巨匠などの邦画の編集作業にAdobeのPremiereが使用されていることが度々話題に上がっています。

Premiere や Avid Media Composer などの編集ソフトも昔からハリウッドをはじめ世界的に使われてきていますし、Adobe Premiereに関しては現在の編集ソフトのシェアNo.1というデータがAdobe社自身から公表されていますが、Final Cutにもしもがあればそのシェアはどうなっていたのかわかりません。

Final Cut シリーズも元々はハリウッドで使用される程のソフトですが、その後にいくら良いアップデートを繰り返して信頼を得ても、暦の長いユーザーには「いつかまた起こり得るかもしれない」というネガティブな印象を植えつけてしまう可能性があります。

このような事例から、ユーザーのニーズを無視したアップデートを行うと多数のユーザーが離れてしまうリスクに加えて、コアなユーザーの再獲得の難易度を上げることにもなり、コアなユーザー = プロフェッショナルから選ばれない というイメージが付き新規ユーザー獲得も難しくなるという悪循環に陥る可能性もあります。

1-4. ユーザーの声に耳を傾ける必要がある

このように、ユーザーに何を求められているのか、ユーザーが不満に感じているところは何か、が具体的にわかっていないアップデートは単に運営側の自己満足で終わってしまいます。

またAppleのように将来を見据えた大幅なアップデートだったとしても、いままで出来ていたことが突如できなくなってしまうとユーザーに混乱を与え、スピード感を持ってさらなる改善をしなければその間に他の類似アプリへと乗り換えられてしまいます。

そのような事態を避けるため、提供サイドにはユーザーの不満や要望、利用方法や潜在クレームなどを把握しておく必要があります。

2. ユーザーの意見を直接聞くことの重要性

ユーザーの声を聞く方法は多岐に渡ります。

  • 問い合わせフォームを設置する
  • アンケートフォームを設置する
  • App Store のレビューを確認する
  • TwitterやFacebookなどSNSをチェックする
  • Google検索で直接アプリ名を検索する
  • アプリの評価サイトをチェックする
  • テスターに依頼する
  • モニターを雇用する
  • 自分の身の回りの人から使用感を直接聞く、など

これの中から、どのような意見を聞きたいかによって取るべき手段を選択することになります。

ユーザーの声を聞く上で、まず一番に重視され実装を求められるのは「お問い合わせ」です。

直接的にユーザーの声を聞くことのできるこの「お問い合わせ」と「アンケート」ですが、それぞれ目的が違います。

まず「お問い合わせ」からみていきましょう。

2-1. お問い合わせからは顕在的なクレームが見える

お問い合わせから連絡してくるユーザーは、利用中に問題が発生し、それの解決を求めてくるユーザーです。

1:29:300 の割合で示す ハインリッヒの法則 というものがあります。

これはアメリカの損害保険会社にて技術・調査部の副部長をしていたHerbert William Heinrichが1920年代に導き出した労働災害の割合に関する法則で、割合の内訳は下記です。

  • 1件の大きな事故・災害
  • 29件の軽微な事故・災害
  • 300件のヒヤリ・ハット
    (事故には至らなかったもののヒヤリとした、ハッとした事例)

このハインリッッヒの法則をマーケティングに置き換えた場合が下記になります。

  • 1件の致命的な失敗
  • 29件の実際にユーザーから苦情がきた失敗
  • 300件のクレームにいたらなかった潜在的な不満

これは「運営側の視点」なので、今度はこれをユーザー視点に置き換えたデータを紹介します。

カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ共著、ダイヤモンド社 の 「サービス・マネジメント」 で紹介されている、eサティスファイ・ドットコムの調査結果ではこのように出ています。

つまりは、実際にクレームを出してきた 29人 のユーザーは、不満をもったユーザー全体の割合からみるとたったの 4% ということになります。

したがって、お問い合わせでは積極的に声を上げてくれる極めて少数のユーザーから顕在的な不満を教えてもらうことはできても、それ以外の大多数のユーザーが抱えている潜在的な不満を把握することは難しくなります。

2-2. アンケートを使って大多数のユーザーが抱えている潜在的な要望を収集する

アンケート調査のメリットは、「あらかじめ質問事項を用意できる」ことにあります。

誰しもが何かのアンケートに回答した経験はあるはずですが、どのアンケートでも大抵「良いポイント」と「悪いポイント」について質問されます。

そこには前述のようにサービスの「伸ばしたいポイント」と「改善を求められているポイント」を把握したい意図があります。

さらにそこに自由記述スペースを設ければ、ユーザーの普段の使い方まで教えてもらえる可能性もあり、そこにこそ運営が想定し得なかったイレギュラーケースが隠れています。

ですので、ユーザー自身の情報や利用状況を知るために適切な質問を用意しておき、ユーザーのニーズを把握することが重要です。

2-3. アンケートに答えてくれる人の割合

それでは実際どのくらいの人がアンケートに答えてくれるのかについて、実際のデータをお見せします。

下記はとあるサービスに設置したアンケートの初期バージョンの集計結果です。

集計期間が一律ではないのですが、アンケートの回答率の実例としてご紹介します。

ほぼ1年間の集計結果ですが、アンケートページを訪問したユーザー数 1202人 のうち 237人 の回答を得られ、解答率は 20% でした。

その後、集まった回答を元に、質問を少し変更して第2バージョンを作成した結果が下記です。

415人中 108人 の回答で 26% の回答率となり、前回のアンケートよりも高い解答率を獲得できました。

一番下が最新の第3バージョンの集計結果です。

30人中 15人 の回答で、回答率は 今のところ 50% となっています。

もちろんこの回答結果は一例で、サービスがスタート直後なのか、もしくは何年目なのかや有料か無料か、多くのユーザーに関係する機能提供があったかどうかなどといったタイミングで変化します(今回は無料で行っています)。

統計学に ばらつきの法則 とも呼ばれる パレートの法則(80:20の法則) がありますが、実際の集計結果も踏まえると、アンケートを実施すると全体の 約20% のユーザーから回答を得られると考えられます。

2-4. 適切な質問の設置とユーザーの負担の軽減を考える

先ほどの結果では約2割のユーザーでしたが、回答の内容を工夫することで、得たい情報をなるべく大人数から聞かせてもらうことができます。

アンケートに置きたい項目は下記です。

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • アプリの用途
  • 気に入っている機能
  • 使いづらいと感じている機能
  • 追加してほしい機能
  • 自由記述欄

まずユーザー自身の最低限の情報を得ることでどの年齢層のユーザーに使用されているかを把握できます。

またアンケートを提供している既存のアンケートサービス、アンケートツールを利用すると、その他にも端末情報やアンケートの回答時間もわかるため、そこから回答時間 = アプリがどの時間帯によく使われているのかも把握できます。

次に、前述していた潜在的なニーズを把握するための質問を用意します。

また、先ほどのアンケートで徐々に解答率が上がっていたかと思いますが、回答方法からユーザーの負担を軽減させることも考えてください。

ユーザーの意見を聞くには文章で入力してもらうのが望ましいですが、アプリであればスマートフォンでの回答が多くなり入力が負担となった時に途中で離脱される可能性が高くなります。

第3バージョンでの回答率50%は、今までで回答にあった「よくある要望」を選択できるタイプの質問にして用意しておき、過去バージョンよりも選択タイプの質問を多めにしてユーザーに負担をかけない内容に変更した結果が表れています。

またアンケートから知ることのできる情報には ユーザーの属性 も含まれます。

下記はGMOの顧客満足度調査の資料から抜粋したものです。

  • HH層
    ロイヤルティ(利用継続率)、満足度ともに高い優良なユーザー
  • LH層
    ロイヤルティは高い反面、満足度が低い。そのアプリ、サービスのみ利用している、もしくは会員として囲い込まれていて他への乗り換えコストが高い、乗り換え手続きが面倒で、仕方なく継続利用しているユーザー
  • HL層
    ロイヤルティが低く、満足度は高い。
    現在利用しているアプリ、サービスで満足しているがそれより安い、もしくは興味のある新しいアプリやサービスが登場すると、簡単に乗り換える可能性があるユーザー
  • LL層
    ロイヤルティ、満足度が低く、アプリやサービスに対する悪評を広める可能性のあるユーザー

アンケート調査からはこのようなユーザー属性も把握できるため、それぞれの層のユーザーに適したアプローチをすることも可能になります。

さいごに

CS調査においてのアンケート手法はとても効果的です。

ただ、それだけでも見えない部分があるので、ユーザーの声を聞くためにできることは準備しておくことが重要です。

例えばツールを選択することも有効です。

アンケートや問い合わせはWebやメールクライアントソフトを使用します。

若年層ユーザーから直接声を聞きたい場合には、彼らが普段常用しているLINEやTwitter、FacebookなどのSNSツールを利用することでアプローチの敷居が下がって意見や要望を寄せてくれることもあります。

サービスを長く続けていくために、ユーザー目線を常に意識して運営していきましょう。

※ 無料アンケート作成ツール「クリエイティブサーベイ」の使い方はこちらの記事をご覧ください。
アンケート作成サイト「クリエイティブサーベイ」の使い方の解説 

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