iOSアプリを開発してAppStoreにリリースするためには Apple Developer Program に有料で登録する必要があります。
この Apple Developer Program では リリース版アプリ (Dist) と別に Adhoc という評価版を作成して、アプリをテストすることができます。
この Adhoc は大変便利なのですが、ユーザー保護の視点から使用を許可するデバイスを登録しなければならなかったりと手間が多いことも事実です。
この Adhoc とは別に In-House という形式で企業組織内の端末に簡単にアプリを配布させることができるプログラムがあります。
それが Apple Developer Enterprise Program です。
本記事ではこの Apple Developer Enterprise Program の登録方法を解説していきます。
また本記事では D-U-N-S Number 取得については触れていません。
D-U-N-S Numberについてのお問い合わせは下記のAppleサポートでご確認ください。
D-U-N-S® 番号- サポート – Apple Developer
また D-U-N-S Number は Appleのサイトから無料で取得することができます。
Appleのサイトからは下記にログインして取得できます。
Look up your D-U-N-S Number – Enroll – Apple Developer
1. Apple Developer Enterprise Program とは
組織内(登録した法人企業内)のみで使用するアプリの開発·運用に特化したプログラムです。
Apple Developer Enterprise Program という名称で ADEP (もしくは iDEP ) とも略されます。
通常の Apple Developer Program では作成できない In-House版アプリを作成して、端末ごとのUDIDなどを登録しなくても配布が可能です。
ただ Apple Developer Enterprise Program では AppStore用のアプリの作成·リリースをすることはできません。
またAppleの開発者プログラムには個人のAppleアカウントを紐づける必要がありますが、すでにApple Developer Programに紐付けられているAppleアカウントを使用することはできません。
Apple Developer Enterprise Programについてはこちらの記事でも解説していますので詳しくはこちらをご覧ください。
Apple Developer Enterprise Program と In-House の用途について
それでは次から順に登録の流れを説明していきます。
2. Appleに会社の審査を提出する
最初に下のリンクを開き 「登録を開始する」ボタンをクリックしてください。
Apple Developer Enterprise Program
Appleアカウントでのログインを求められるので、Apple Developer Enterprise Program で使用するAppleアカウントでログインしてください。
ちなみにすでに Apple Developer Enterprise Program や Apple Developer Program で使用されているAppleアカウントは利用できないの注意してください。
次に下の画面が表示されたら Entity Type の下の 「Select」 と書いている選択フォームをクリックしてください。
すると Company / Organization と Government / Organization の選択肢が出てきます。
Entity Type とは 企業形態 で、一般的な企業の場合は Company を選択してください。
選択したら 「Continue」 と書いてある青いボタンをクリックしてください。
ちなみに黄色の枠の中ではおおまかに下記のような確認をされています。
- あなたの会社はその国で法人と認識されているか
- D-U-N-S Numberを取得済みか
- 今登録を行っているあなたはその会社で法的権限を持っているか
ADEP の場合は個人や屋号、支店での登録ができません。
また登録を行う方は創業者や取締役員のようにその会社におけるなんらかの法的権限を有していなければなりません。
この法的権限の部分には注釈があるのですが、「上級社員もしくはそれらからその権限を受けた者」でも可能と書いてあります。
最後に D-U-N-S Number の取得有無ですが、このD-U-N-S Numberは取得に誰もが手こずり、かつ番号取得までに時間がかかる項目なので予め取得を促しているようです。
クリックすると下記のような縦長の画面が表示されます。
それでは上から順に説明していきます。
ページの上に Authority to Sign Legal Agreements というラジオチェックで選ぶ項目があります。
ここでは 法的合意に署名する権限 を聞かれています。
チェックの上が 創業者もしくは所有者の方のチェック欄で、下が 今回の登録で権限を与えられている方がチェックを入れる欄です。
会社の創業者/所有者であれば上にチェックを、それ以外で権限を与えられている方であれば下にチェックを入れてください。
その下に Organization Information という 組織情報 を入力する欄があります。
ここで各項目ごとに会社の情報を入力してください。
- 1. Legal Entity Name
法人名を英語表記で入力してください。 - 2. D-U-N-S® Number
D-U-N-S Number を入力してください。 - 3. Website
会社のウェブサイトのURLを入力してください。 - 4. Headquarters Phone
代表電話番号を入力してください。
Country Codeは日本の場合 81 を選択してください。
電話番号は 090や050、03など先頭の「0」を略さずに入力してください。
Extension では直通の内線番号があれば任意で入力してください。 - 5. Number of Employees
会社の従業員数を選択してください。 - 6. Your Work Email
あなたの仕事用(会社ドメイン)のメールアドレスを入力してください。
最後に My organization is a Mobile Device Management vendor. と質問されています。
Mobile Device Management = MDMの提供者かを聞かれていますので、MDM関係のシステム開発や販売提供を行っていない場合にはチェックを入れないでください。
MDM とはモバイルデバイス管理といって、企業や教育機関などで大量のiPadやiPhoneを扱うときに、その管理を一元化して容易にできるシステムのことです。
例としては任意のアプリを夜間などの端末が使われていない時間帯を指定して自動でサイレントインスールしたり、WEBブラウジングを制限、AppStoreやその他のデフォルトのアプリを非表示、1つのデバイスの設定を全てのデバイスに適用させたりすることができます。
この MDM は近年、企業や団体単位でのデバイス導入が加速したために需要が急速に増しています。
最後に下記のような 画像認証 の項目があります。
画像の英数字をフォームに入力してください。 (英字は全て小文字でも大丈夫です。)
入力した内容に間違いがなければ「Continue」と書いてある青いボタンをクリックしてください。
クリックすると内容の確認画面が表示されます。
画面の真ん中の Organization Information という項目の中の Address 欄に、先ほど入力した D-U-N-S Number から会社の本社住所が自動で反映されています。
住所に間違いがなければチェックを入れてください。
※ Address欄は入力必須項目となっていてチェックを入れないと赤いエラー表示になり先にすすめません。
入力した内容に間違いがなければ 青の「Submit」ボタンをクリックしてください。
最後に登録の完了画面が表示されます。
この画面で入力した内容を確認できます。
この時点でもAppleから完了メールが来ていますが、Apple側の審査を通過しApple Developer Enterprise Programへの登録が完了するとまたメールで通知されます。
それまでの審査ステータスを確認したい場合は
へログインして確認することができます。
また審査ステータスに変化がない状態が続いた時は
からAppleへ問い合わせることができます
その場合先ほどの完了画面の緑色の枠の中の Enrollment ID が必要になるので、必ずメモなどして残しておいてください。
以上が Apple Developer Enterprise Program への審査の申請手順の解説でした。
3. Appleから登録完了の通知を受け取る
申請が完了すると Apple の審査が開始します。
下記のメールが届くので、審査が完了するまで待ちましょう。
審査が完了するタイミングで Apple から Enterprise Program の利用目的についての電話が来ます。
今回 Enterprise Program に申し込んだ目的、
「自社で作成したアプリを社内利用する際に、配布コストが低いと判断したため申し込みました。」
と説明したところ Apple のスタッフから了解を得ることができました。
その後に下記のメールが届きます。
———————-
あなたの登録要求は受け入れられました。
プログラムの使用許諾契約書を確認して、組織のApple Developer Enterprise Programへの登録を継続することができます。
これでようやく審査が完了しました。
このあとは支払いをすれば登録の全ての段階が完了します。
メールに記載されている青文字の 「Review now」 をクリックしてください。
4. ADEP の支払いを済ませて登録を完了させる
支払い完了までの流れは特に難しい箇所はないので簡潔に解説します。
ここからは以下の流れで進んでいきます。
- メールの 「Review now」 をクリックしてブラウザで ADEP の画面を開く
- ログイン画面が表示されるので、ADEP登録に使用したAppleアカウントのメールアドレス、パスワードを入力する
- プログラムのライセンス契約の同意を求められるので、チェックを入れてすすむ
- 支払い情報を求められるので、クレジットカードの情報を入力する
以上の流れで登録は完了です。
今回ADEPを購入した時の価格は 37,800円 に 消費税 3,024円 で合計 40,824円 でした。
購入の際に価格の欄の近くに注意書きがあるのですが、Apple の Developer Program は為替レートによって変動します。
支払いが完了すると下記の画面が表示されて、支払い完了のメールも届きます。
これで ADEP の登録が完了しました。
5. ADEP へログインする
それでは早速 Apple Developer Enterprise Program にログインしてみましょう。
支払い完了後に送られてくる下記のメールからログインすることができます。
Learn how to get started
のリンクからはApple Developer Enterprise Program の概要や使い方を見ることができます。
sign in to your account
をクリックするとログイン画面が表示されるので、ADEP のアカウントでログインしてください。
ログインすると下記の画面が表示されます。
Apple Developer Program と違い、会社名の下に 「Apple Developer Enterprise Program」 と表示されていることが確認できます。
Certificates, Identifiers & Profiles をクリックしてください。
登録した直後でまだ真っさらな状態ですが、Provisioning Profiles をクリックして画面右上の 「 + 」 の追加ボタンを押すと Distribution に In House があることが確認できます。
また画面上部の黄色の箇所にはこう表記されています。
———————-
ハウス配布では、このアカウントのプロビジョニングプロファイルは、プログラムの有効化の2週間後に利用可能になります。
2週間が経過しないと利用できない旨が表記されていました。
利用可能までのラグの期間が長いので、それまでの間に他の準備をしておくことをおすすめします。
以上が Apple Developer Enterprise Program の登録方法についての解説でした。
6. 登録時に注意したい ADEP と ADP の違い
本記事では D-U-N-S Number 取得に関しては触れずに解説しましたが、今回のADEP登録で一番時間がかかったのが D-U-N-S Number に関連した点だったので注意点として残しておきます。
※ すでに ADP を取得している方向けの内容です。
ADEP は ADP の登録よりAppleの審査が厳しいものとなっています。
ADP の場合は法人登録でも 電話番号 の登録は不要でした。
そのため過去にADPを取得した際、D-U-N-S Number に電話番号を登録していなかったのですが、今回は電話番号を求められて、その申請から審査までで時間がかかりADEP登録完了までにほぼ一ヶ月かかってしまいました。
まずADEPの申請を完了したあとにAppleのADEP審査スタッフからメールと電話で連絡があり、D-U-N-S Number に電話番号が登録されていないことを知りました。
電話番号についての審査の際には、会社のWebサイトに電話番号が記載されているかも確認すると言われたので、Webサイトに電話番号の追加もしました。
次にADEP審査スタッフからメールで誘導されたリンクから Dun & Bradstreet に、D-U-N-S Number に会社の代表電話番号の追加を依頼しました。
Dun & Bradstreet からの返信が数日おきのペースだったことと、追加依頼が承認されて反映するまで14営業日とのことだったので、今回は約一ヶ月という時間がかかってしまいました。
D-U-N-S Number は アメリカの Dun & Bradstreet社が発行·管理していて、日本では東京商工リサーチが代行しています。
自社情報の追加·修正は無料で対応してもらえるのですが、内容を確認する場合は会員登録して一回につき3,000円程度かかるので、D-U-N-S Number を取得する際には登録した情報をメモして保存しておくことを強くおすすします。
7. さいごに
以上が Apple Developer Enterprise Program の取得方法の解説でした。
全て英語の登録画面と D-U-N-S Number 取得の敷居の高さなどが少しネックですが、それらをクリアしてでも利用価値のある素晴らしい機能を持った In-House版アプリが作成できます。
ADEP 登録の際にはぜひこの記事を参考にしてください。
Apple Developer Enterprise Program
Apple Developer Enterprise Program と Apple Developer Program の違いについてはこちらの記事で解説していますのでご参考にしてください。
Apple Developer Enterprise Program と In-House の用途について